日本の年金制度を完全解説!厚生年金・国民年金の仕組みと将来予測
はじめに:なぜ今、年金制度を理解すべきなのか
「年金なんて、まだ先の話」そう思っていませんか?でも、年金制度の理解は老後資金計画の第一歩です。
2024年の年金制度改正で、受給開始年齢の選択肢が75歳まで拡大しました。この変化の意味を理解し、自分の老後戦略を立てることが、これまで以上に重要になっています。
日本の公的年金制度の全体像
2階建て構造の年金システム
日本の年金制度は「2階建て構造」になっています:
┌─────────────────────────┐
│ 厚生年金保険(2階部分) │ ← 会社員・公務員が加入
├─────────────────────────┤
│ 国民年金(1階部分) │ ← 20歳以上60歳未満の全員が加入
└─────────────────────────┘
被保険者の種類
区分 | 対象者 | 保険料負担 | 年金給付 |
---|---|---|---|
第1号被保険者 | 自営業者、学生、無職など | 月額16,520円(2024年度) | 国民年金のみ |
第2号被保険者 | 会社員、公務員 | 給与の18.3%(労使折半) | 国民年金+厚生年金 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者の配偶者(専業主婦など) | 負担なし | 国民年金のみ |
国民年金(基礎年金)の詳細解説
保険料と給付額
2024年度の数値
- 保険料:月額16,520円
- 満額受給額:年額816,000円(月額68,000円)
- 加入期間:20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)
年金額の計算方法
基礎年金額 = 816,000円 × (保険料納付月数 ÷ 480ヶ月)
計算例:35年間納付した場合
816,000円 × (420ヶ月 ÷ 480ヶ月) = 714,000円/年
月額:約59,500円
保険料の免除・猶予制度
経済的に困難な場合の救済制度:
制度 | 対象者 | 年金額への反映 |
---|---|---|
全額免除 | 所得が一定以下 | 1/2が年金額に反映 |
3/4免除 | 所得が一定以下 | 5/8が年金額に反映 |
半額免除 | 所得が一定以下 | 3/4が年金額に反映 |
1/4免除 | 所得が一定以下 | 7/8が年金額に反映 |
学生納付特例 | 学生 | 年金額に反映されない(追納可能) |
厚生年金保険の詳細解説
保険料の仕組み
保険料率(2024年度)
- 料率:標準報酬月額の18.3%(労使折半で各9.15%)
- 標準報酬月額:88,000円〜650,000円の32等級
厚生年金の計算方法
厚生年金額は以下の2つの部分から構成されます:
1. 報酬比例部分
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
2. 経過的加算
2003年3月以前の加入期間に対する特別加算
具体的な受給額シミュレーション
ケース1:平均年収400万円で40年間勤務
- 平均標準報酬月額:約33万円
- 厚生年金額:約109万円/年
- 基礎年金と合計:約190万円/年(月額約15.8万円)
ケース2:平均年収600万円で40年間勤務
- 平均標準報酬月額:約50万円
- 厚生年金額:約164万円/年
- 基礎年金と合計:約245万円/年(月額約20.4万円)
マクロ経済スライドの影響
マクロ経済スライドとは
少子高齢化に対応するため、年金額の伸びを抑制する仕組みです。
調整の仕組み
年金額の改定率 = 賃金・物価上昇率 - スライド調整率
- スライド調整率:約0.9%(2024年度)
- 物価が2%上昇しても、年金は約1.1%しか増えない
将来への影響予測
厚生労働省の2024年財政検証によると:
シナリオ | 2024年の所得代替率 | 2050年の所得代替率 |
---|---|---|
経済成長ケース | 61.2% | 50.8% |
標準ケース | 61.2% | 50.0% |
低成長ケース | 61.2% | 44.5% |
所得代替率:現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合
年金受給開始年齢の選択
繰上げ・繰下げ受給の損得計算
繰上げ受給(60〜64歳)
- 減額率:1ヶ月あたり0.4%
- 60歳受給開始:24%減額
繰下げ受給(66〜75歳)
- 増額率:1ヶ月あたり0.7%
- 75歳受給開始:84%増額
損益分岐点の計算
受給開始年齢 | 年金額(65歳時点=100) | 損益分岐年齢 |
---|---|---|
60歳 | 76% | - |
65歳(標準) | 100% | 基準 |
70歳 | 142% | 81歳 |
75歳 | 184% | 86歳 |
将来の年金額を増やす方法
1. 付加年金(第1号被保険者向け)
- 付加保険料:月額400円
- 受給額増加:200円×納付月数/年
- 回収期間:たった2年!
2. 国民年金基金
- 自営業者向けの上乗せ年金
- 掛金は全額所得控除
3. 任意加入制度
- 60歳以降も国民年金に加入可能
- 65歳まで(年金額が満額でない場合)
4. iDeCoとの併用
- 公的年金の不足分を補完
- 掛金全額所得控除のメリット
年金制度の今後の見通し
2025年以降の主な改正予定
- 国民年金保険料の上限検討
KIKIからのアドバイス:年金戦略の立て方
年代別の対策
20代〜30代
- iDeCoやNISAで公的年金の不足を補う
- 厚生年金加入期間を最大化(転職時の空白期間に注意)
40代〜50代
- ねんきん定期便で受給見込額を確認
- 不足額を明確にして追加の資産形成
60代以降
- 繰下げ受給の検討(健康状態と相談)
- 在職老齢年金の仕組みを理解して働き方を最適化
まとめ:年金は老後資金の土台
公的年金だけで老後生活を賄うのは難しいのが現実です。しかし、終身で受給できる公的年金は老後資金の重要な土台です。
今すぐやるべきこと
- ねんきんネットに登録して将来の受給額をシミュレーション
- 不足額を計算して、必要な貯蓄額を明確化
- iDeCoやNISAを活用した補完的な資産形成を開始
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